我が喜劇映画研究会は、1992年12月13日より《生演奏付きの無声映画》上映会を始めました。
当時の日本ではマツダ映画社さんがナマの活弁上演を『無声映画鑑賞会』として定期開催しているだけ、これも特殊なケースであって、《無声映画は音ナシで上映する=無音状態を厳かに謹んで鑑賞する》なんて不文律が映画関係者の間でまかり通っておりました。そんな調子なもんだから、相当な古典映画マニアや研究者でも、ナマ伴奏付き上映や弁士の語りを邪道だと思っている人はかなり多く…腹ペコで鑑賞して腹がグ~なんて鳴った日にゃあ、劇場中に音が伝わるような真空状態が続いていたンです。こんなのって、無声映画伴奏がひとつのジャンルとして確立している今じゃあ、ちょっと考えられない、嘘みたいな話ですよネ。
行政機関での企画上映ですらこんな無音志向なので、僕は「何とか因習的なサイレントを打破したい」「古き佳き大正期の伴奏を復活させたい」「若い人、無声映画を知らない人の興味も集めたい」と模索しました。その結果、イキナリ「伴奏ではなく、ライヴならではの緊迫感ある演奏」を無声映画に求め、本番当日まで演奏者には上映作品を見せない(つまり情報を一切与えない)インプロヴィゼーションによる映画と音楽の真剣勝負を思いつきました。
さて、かくも無謀な発想を引き受けてくれる音楽家が、そもそもこの日本に存在するのか?と仲間内からも嘲笑されましたけど…何と!市川崑監督作品の音楽を数多く手掛ける谷川賢作さん(ピアノ)と、盟友の太田惠資さん(ヴァイオリン)のお二人が「面白い!やりましょう!売られたケンカは買わなきゃ損!」と名乗りを挙げてくれたのです。こうして拙会の名物となる『生演奏&パフォーマンス付き上映会』が誕生した訳です。
(実は1992年の夏、チェロ奏者の三木黄太さんへ最初に相談したのですが、その頃は「オレは自信ないし、当分は音楽活動を自粛するつもり」とのお返事で谷川さんを紹介され、本番に助っ人として太田さんが登場という流れに到りました)
この上映イベントは、《映画(過去)とライヴ(現在)、互いに関連を持たない事象が時空を超えて奏でる偶発的なポリフォニー!》《古典映画の新解釈=ジャジーでアグレッシブな調和》《無声映画の律動に、音楽家が技量と才能と瞬発力で挑む超次元の闘い》を謳い、回を重ねる毎に参加ミュージシャンの絆から別のライヴも生まれました。そのうちいくつかの名演をYouTubeで配信しておりますので、是非ご視聴下さい!
(既にアップロードから10年以上を経過した動画もあるため、画面サイズや画質・音質が現行の基準ではないものもありますけど…どうかお楽しみを!)
探偵学入門!
個人的に、この本番を会場で体験できた人は相当な幸せ者だと思ってます。演奏があまりにもキョーレツで、このイベントから今日に到る生演奏付き上映が認知されたといっても過言ではないでしょう。
谷川俊太郎さんとチャップリン
この映像のために詩を書き下し、カッチリ曲をアレンジして頂きました。この感動はトンデモナイ!
チャップリンと邦楽
仙波清彦師匠による斬新なアレンジ。えっ?ミスマッチでは?と思っている間もなくハマっちゃう、まさしく神事のごときお囃子!
仙波清彦vs.チャップリン(Chaplin at the Japanese traditional music by Kiyohiko Senba )
月世界旅行《河内版》
これぞインプロヴィゼーションの真骨頂!世界的なタブラ奏者の吉見征樹さんと谷川賢作さんによる伝説の高座!? 爆笑必至!
上映の合間にガチンコ・セッション
幕間でイキナリ演奏を任されたら…壮絶な展開にお客様は絶句!
カーニバルの朝('Manha De Carnabal'at the ethnic music)
マック・セネットの最狂自動車レース
芳垣安洋さんがリーダーとなったアルティメット・セッションによるドタバタ喜劇のノンストップ・バトル!
超絶ジャズvs.セネット喜劇(The greatest jazz music featuring Mack Sennett's Comedy )
傑作ギャグvs.即興演奏
最強ミュージシャン軍団が予測不能のギャグに挑んだ!旋律は笑う!
超絶ロックvs.無声映画喜劇(The greatest rock featuring the golden era of silent films)
異郷の闘い!
上映前に谷川賢作さんがアラブ・インドのエスニック音階楽士トリオと初見でバトル!観客は約600人の酔っ払いでしたけど、あまりの迫力に泣き出す人まで!
異郷のリベンジ!
谷川賢作さんがエスニック音階トリオと1年後に再戦!今度はみんな楽しそうにリラックスしているけど…音楽を学ぶ人には、かなりコワイ展開です!
アラビンディアvs.谷川賢作 第二戦('longha farafaza'at jazz)
古楽器と異郷のメロディ①
生演奏付き上映会とは別に拙会が撮影を依頼されました。カメラ・マイクでの録音なので音質にやや問題ありますが、演奏はとにかくスゴイ!
古楽器と異郷のメロディ②
同日のライヴより、濃密な演奏を続けてお聴き下さい!
古楽器と異郷のメロディ③
同日のライヴより、高本一郎さんのリュート、ソロ演奏!
お楽しみ頂けましたでしょうか?
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